マイコン周辺回路設計でミスを防ぐ チェックポイント
マイコンを中心とする電子機器の設計では、システムの安定動作を支える「周辺回路設計」が極めて重要です。
多くの産業機器や民生機器に組み込まれるマイコンは 電源、クロック、リセット、通信、I/Oなど
多様な信号と接続されており、その周辺回路がわずかでも不適切だと 動作不良や誤動作を招きます。
設計の初期段階でミスを防ぐためには、「回路構成を理解したうえでのチェック体制」と
「設計レビューの仕組み化」が欠かせません。
電源回路まわりの安定化
マイコン動作の信頼性を左右する最大の要素が 電源の品質です。
電圧降下やノイズ混入によって不安定になると、クロックの乱れや通信エラーを引き起こす可能性があります。
特に確認すべきポイントは以下の通りです。
1. デカップリングコンデンサの配置
各電源ピンの近傍に適切な容量(例:0.1μFや10μFなど)のコンデンサを配置し ノイズを吸収
マイコンの高周波動作を考慮して コンデンサのリード長やパターンインダクタンスを
最小化することが重要
2.電源シーケンスの設計
複数電圧を使用する場合 電源の立ち上がりとシャットダウンの順序を制御
不適切な立ち上がりは、内部ラッチアップやEEPROM破損の原因
3.電源グランドの分離とレイアウト
アナログ系とデジタル系を分離し 帰還ノイズを防止
レイアウト段階でアナロググランドの取り回しを意識することも有効
クロック・リセット回路の確認
クロック回路はマイコンの動作の“心臓部”とも言える要素です。
外部水晶発振子や内蔵発振器を使用する場合、その配線や部品定数の確認を怠ると
周波数誤差や発振不安定が起こることがあります。
1.水晶発振子の負荷容量の整合
データシート推奨値に基づく C1/C2値設定とレイアウト距離の最小化
2.リセット回路の立ち上がり時間
リセット解除タイミングが早すぎると
電源安定前にマイコンが動作を開始し作動する恐れがあるため RC定数の確認は必須
3.ウォッチドッグ回路の有効化
異常検知時のリセット復帰手段として組み込み
ソフトウェア暴走の対策
通信まわり・I/O設計の注意点
UART、I²C、SPIなどの通信系は、異常検出や再送処理を行う上でのインターフェース品質が重要です。
1. プルアップ・プルダウン抵抗の適用確認
I²Cラインやオープンドレイン出力には必須
適正値の設定を怠ると通信失敗の原因
2.レベル変換(電圧互換性)
3.3V系と5V系が混在する回路では
レベルシフタや分圧抵抗の実装で過電圧を防止
3.未使用ピンの処理
フローティング対策としてプルアップ・プルダウン設定または
ポート固定を行うことで ノイズ起因の誤動作を防止
外部ノイズ(ESD、サージなど)が侵入しやすい通信ピンには、
TVSダイオードなどの保護素子を追加することで耐ノイズ性を高められます。
レイアウトと実装時のチェックリスト運用
マイコン周辺回路は、回路設計だけでなく基板実装段階の取り扱いにも注意が必要です。
ランドパターンの寸法やピン配列の確認ミス、ラベル記載の誤りなどが量産不具合に直結します。
そのため 「設計→レイアウト→レビュー→試作」 の各段階でチェックシートを活用し、
再現性のある設計手法を確立しておくことが推奨されます。
特に評価工程では 電圧波形や電流変動、クロック信号などをオシロスコープで実測し、
設計値との乖離を確認することが重要です。
実機検証で得た知見を設計フローにフィードバックすることで、次回開発の品質もさらに向上します。
おわりに
最終的に信頼性を確保するには、
「人の感覚に依存しない仕組み化」と「部門横断的なレビュー」が効果的です。
電気設計者だけでなく、ソフトウェア・メカ設計者や製造・品質担当も加わったレビューを実施することで、
実装後に発生しうる問題を事前に防ぐことができます。
当社では、長年にわたり多様なマイコン環境(Renesas、NXP、Microchip、STMicroなど)で開発を行い、
回路設計標準やチェックフローを体系化しています。
これにより、安定した制御と高い保守性を両立した製品設計を実現しています。
組み込み開発なら、当社にお任せください。
当社は、回路設計・基板設計、メカ設計といったハードウェアの設計領域から、組み込みソフトウェア、システム開発といったソフトウェア領域まで、一貫対応が可能です。また、部品実装や組立といったものづくりの領域まで対応できるODM企業として活躍しています。
委託先を分散せず一社で完結することにより、スピーディーな試作開発、そして量産が可能となり、ODM先をお探しの企業様に選ばれる大きな理由の一つとなっています。


/
技術情報・技術コラム

- 組み込みソフトウェア
- 組み込みハードウェア
マイコン周辺回路設計でミスを防ぐ チェックポイント
マイコンを中心とする電子機器の設計では、システムの安定動作を支える「周辺回路設計」が極めて重要です。
多くの産業機器や民生機器に組み込まれるマイコンは 電源、クロック、リセット、通信、I/Oなど
多様な信号と接続されており、その周辺回路がわずかでも不適切だと 動作不良や誤動作を招きます・・・

- 組み込みソフトウェア
- 組み込みハードウェア
ODMの活用について
ODM戦略とは、製品の設計から製造までをODM先に委託することで、自社のオリジナル商品を市場に投入できるビジネス戦略です。特にスタートアップ企業にとって、技術や設備がなくても製品開発が可能になる大きなメリットに…

- 組み込みソフトウェア
- 組み込みハードウェア
組み込みシステムについて
組み込みシステムとは、家電製品や産業機器などに組み込まれ、特定の機能を実現するためのコンピューターシステムを指します。 産業用機器、医療用機器、家庭用機器等、制御を必要とする多くの組み込み機器に…

- 電子回路設計
電子回路の基礎知識
電子回路は、家電を始め、スマートフォンやPC、自動車や産業機器など、あらゆる機器に組み込まれており、電子回路に組み込んだマイコンとともに、機器の持つ機能を…

- 組み込みハードウェア
- マイコン制御
コストダウンに繋がる部品選定のポイント
製品開発において、部品のコストダウンは、製品原価の削減につながり、利益率を高めることが可能となります。また、製品価格を下げることで、販売量やシェアを増やすことに繋がり、市場での競争力を高めます。ただし、単純に安い部品を選ぶだけでは…

- 組み込みハードウェア
- マイコン制御
失敗しない委託開発先の選び方
受託開発は企業や組織が求めているシステムの開発を外部に依頼し、それに沿ったシステムやソフトウェアを開発することを指します。企業が自社リソースを最大限に活用しつつ、プロジェクトの開発を外部の委託先(企業や開発者)に依頼…

- 組み込みハードウェア
- マイコン制御
組立・生産を考慮したメカ設計のポイント
メカ設計を進める中で、組立・生産を考慮して設計することは、工程の効率化によるコスト低減や部品点数削減などに繋がり、競争力を出すことができます。また、組立を簡素化、生産性を安定化させることで…

- 組み込みハードウェア
- マイコン制御
組み込み機器開発とIoTの関係
近年、モノがインターネットにつながる「IoT」が、家電をはじめとするさまざまな組み込み機器に普及しています。このIoTは多くの技術を結集して…

- 組み込みハードウェア
- マイコン制御
ワンチップマイコンの特徴と活用例
ワンチップマイコンとは、簡単に言えば「組み込み機器の制御に必要な複数の電子部品を用途によって、一つのチップに…

- 組み込みソフトウェア
- 組み込みハードウェア


