1.概要
電子機器の信頼性と性能は、温度変化に対する耐性が大きく影響します。
特にトランジスタのVBE温度特性は設計において重要な要素であり、
温度依存性を適切に考慮しないと、予期せぬ動作や故障の原因となる可能性があります。
温度変動に強い設計を実現するための具体的な対策について解説します。
2.IC-VBE温度特性とは
トランジスタにおけるIC-VBE温度特性とは、コレクタ電流(IC)とベース-エミッタ間電圧(VBE)の関係が温度によってどのように変化するかを示す特性です。
トランジスタは動作中に温度が上昇すると、VBEが低下し、それに伴いICが増加する傾向があります。
この特性は、トランジスタの動作点が温度によって変動しやすいことを意味しており、温度変化による誤動作や性能低下を防ぐためには、設計段階でこの特性を適切に考慮することが重要です。
3.IC-VBE温度特性を考慮した設計ポイント
①エミッタ抵抗の使用
エミッタ抵抗をトランジスタに追加することで、温度変化によるICの変動を抑えることができます。
エミッタ抵抗は温度上昇によってICが増加する際、エミッタ電圧を上昇させ、VBEの変動を相殺します。
これにより、動作点の安定性が向上し、回路全体の信頼性が向上します。
②バイアス電圧の温度補償
トランジスタのVBEは温度に依存して変化するため、これを補償するバイアス回路が重要です。
例えば、温度によってVBEが減少する場合、
同様に温度依存性を持つダイオードを使った温度補償回路を組み込むことで、
VBEの変動を補正し、安定した動作を維持できます。
③熱設計の考慮
トランジスタが発生する熱を効率的に放散することも、温度特性を考慮した設計の基本です。
ヒートシンクを使用したり、基板設計において適切な放熱経路を確保するなど、
熱設計を適切に行うことで温度上昇を抑え、トランジスタの動作点を安定させることが可能です。