材料選定のコツ:PC・ABS・POMの特性を活かす設計判断
製品の品質・コスト・信頼性を大きく左右する要素のひとつが「材料選定」です。
とくに産業機器や家電、医療機器などの機構設計では、使用環境や要求特性に応じて
最適な樹脂材料を選定する判断力が求められます。
設計段階で適切な材料選定を行うことで、強度確保だけでなく、
軽量化、生産性、耐久性、外観品質などを高次で両立できます。
ここでは、実際の機構設計でもよく用いられる代表的な樹脂「PC(ポリカーボネート)」
「ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)」「POM(ポリアセタール)」の特性と、
設計時に注意すべきポイントについて紹介します。
PC(ポリカーボネート)の特性と活用ポイント
ポリカーボネート(PC)は、耐衝撃性と透明性を兼ね備えたエンジニアリングプラスチックです。
衝撃強度はABSの約5〜10倍とされ、外力や落下衝撃が想定される製品に適しています。
透明窓、操作パネルなどによく使用されます。
・成形収縮率が小さいため寸法精度が良く、嵌合部品や可動部の精度が求められる機構向き
・耐熱温度(約120℃)が高く、熱源近くの部品やライトカバーなどにも利用可能
・難点は衝撃に強い反面、傷つきやすく応力割れを起こすことがある点
外観用途ではハードコート処理などの表面処理の検討が必要
透明度を活かしたデザイン性の高い外観パーツとしても多く利用され
可視化が必要な組立レビューにも有効です。

ABSの特性と設計での工夫
ABS樹脂は、成形性・機械的強度・表面仕上げ性のバランスに優れ、
最も汎用的に使われている樹脂の一つです。
耐衝撃性・耐熱性はPCに劣るものの、加工性とコストのバランスが良いため
量産性を重視するプロジェクトで重宝されます。
・成形時のひけ・反りを考慮し、肉厚・リブ配置・抜き勾配を設計初期から最適化
・表面に塗装・印刷・メッキ処理がしやすく、デザインバリエーションに柔軟に対応可能
・一方で、耐薬品性が低く、屋外用途では紫外線劣化に注意が必要
屋外や高温多湿環境では、ASAやPC/ABSブレンド材の採用が有効
当社が手掛けるOA機器や産業制御筐体でも、
ABSは基幹構成部材として広く利用されており、
デザイン性と生産性を両立する設計のベースとなっています。

POM(ポリアセタール)の特性と適用判断
POMは、優れた摺動特性と寸法安定性を持つ樹脂で、
ギア・カム・軸受・ヒンジなどの可動部品に多く採用されています。
吸水率が低く、機械的剛性が高いため、長期的に高精度が求められる部品に最適です。
金属部品の代替材として採用されるケースも増えています。
・POMは自己潤滑性に優れるものの、摩耗粉の発生を抑えるため
摺動相手材との組み合わせを考慮
・耐熱性は約100℃までで これを超える温度環境では変形リスクがあるため
使用場所の温度プロファイルを明確化
・溶着や接着が難しく、スナップフィット構造や圧入構造による固定を前提とした設計が基本
これらを踏まえ 強度解析(CAE)を用いて応力分布を確認し
安全率を設計段階で見積もることが信頼性確保の鍵

おわりに
材料選定では 特性値だけでなく「どのような環境で、どのような力を受けるか」を明確にすることが重要です。
例えば、室内の可動機構ならPOMが有効であり 外装カバーには
ABS、衝撃・耐熱性が求められる箇所にはPCが適しています。
また、量産前の試作段階で実際に組立性・剛性を確認することも有効です。
3D CAD上で干渉チェックや応力解析を行い、素材特性を加味した設計検証を早期に進めれば
試作コストの削減につながります。
上記の代表的な材料以外でも PET/HI-PS/PPなど 用途に適した材料を選定する必要があります。
当社では、材料特性を理解し
軽量化と信頼性を両立する製品づくりをサポートしています。
組み込み開発なら、当社にお任せください。
当社は、回路設計・基板設計、メカ設計といったハードウェアの設計領域から、組み込みソフトウェア、システム開発といったソフトウェア領域まで、一貫対応が可能です。また、部品実装や組立といったものづくりの領域まで対応できるODM企業として活躍しています。
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