1.はじめに
近年、IoTデバイスやウェアラブルデバイスなど、バッテリーで動作する組み込み機器の需要が拡大しています。これらの機器では、バッテリー寿命を長くするために低消費電力設計が非常に重要になります。ここでは、主に組み込み機器向けマイコンファームウェアの視点で低消費電力設計のポイントについて紹介します。

2.低消費電力設計とは
低消費電力設計とは、組み込み機器の消費電力を最小限に抑えるための設計手法です。ハードウェアとソフトウェアの両面からアプローチし、システム全体の消費電力を最適化します。低消費電力設計は以下の点で重要です。
3.低消費電力設計の具体的な手法
以下に具体的な手法をいくつか紹介します。
①低消費電力特性に優れたマイコンの選択
例えば、ARM Cortex-Mシリーズや、各社から提供されている低消費電力マイコンなどを検討します。
②マイコンの動作モードの活用
アイドルモード、スリープモード、ストップモードなどを適切に切り替えて必要な時だけアクティブな状態にすることで消費電力を抑制します。
③クロック周波数の動的制御
処理負荷に応じてクロック周波数を調整することで、消費電力を抑制します。
④不使用ペリフェラルの停止
UART、SPI、I2Cなどのペリフェラルは、使用しない時にはクロックを停止することで消費電力を抑えることができます。
⑤割り込み処理の最適化
割り込み処理の回数を減らし、処理時間を短縮します。割り込み処理はマイコンをアクティブな状態にするため、消費電力の増加要因になります。
⑥データ転送の最適化
データ転送量を減らし、転送速度を最適化します。DMA(Direct Memory Access)を活用することで、CPUの負荷を軽減し消費電力を抑えることができます。
⑦電源管理ICの活用
電源管理ICを活用し、効率的な電源制御を行います。DC-DCコンバータやLDOレギュレータなどを適切に選択し、電圧変換効率を向上させることで消費電力を抑えることができます。
⑧ソフトウェア設計の最適化
ソフトウェアの処理アルゴリズムを最適化します。例えば、複雑な計算を簡略化したり、不要な処理を削除したりすることでCPUの負荷を軽減し消費電力を抑えることができます。
⑨ウェイクアップソースの選定
スリープモードからの復帰に使用するウェイクアップソースを適切に選定します。消費電力の少ないウェイクアップソースを選択することで、スリープモードからの復帰時の消費電力を抑えることができます。
4.低消費電力設計の実例
5.まとめ
組み込み機器向けマイコンファームウェアにおける低消費電力設計は、バッテリー寿命の延長、機器の小型化・軽量化、環境負荷の低減、発熱の抑制、動作時間(使用時間)の延長に貢献します。