1.ノイズとは何か? なぜADCに悪影響を与えるのか?
ノイズとは、本来の信号以外の不要な電気的変動のことです。
ADCは入力された電圧を数値に変換するため、信号にノイズが乗っていると、まるで“雑音だらけの声”を聞き取るように、変換結果が正確ではなくなります。
ADCに影響するノイズの主な種類
1.電源ノイズ:電源ラインの電圧変動がADCのリファレンス電圧やアナログ入力に影響
2.デジタルノイズ:CPUやデジタル回路のスイッチングノイズがアナログ回路へ回り込み
3.誘導ノイズ:長い配線がアンテナとなり、外部の電磁波を拾う(ラジオのように)
4.コモンモードノイズ:GNDレベルの変動により発生
2.ハードウェア設計によるノイズ対策(根本解決)
ノイズ対策は「発生源対策」「伝達経路対策」「受容対策」の3段階。
ハードウェア設計は、特にノイズの発生を抑え、ADCへの伝達を防ぐための根本的な解決策です。
1.グランド(GND)設計の重要性
一点アース/スターグランド:
デジタルGNDとアナログGNDを電源の基準点である一点でのみ接続し、分離します。
デジタルノイズがアナログGNDに流れ込むのを防ぎます。
GNDプレーン:
基板全体に広いGNDパターン(ベタGND)を設けることで、ノイズの放射やループアンテナ効果を抑制します。
2.電源ラインの強化
パスコン/デカップリングコンデンサ:
ADCのアナログ電源ピンのすぐ近くに、0.1µFや1µFといったコンデンサを配置。
電源ノイズを吸収し、安定したリファレンス電圧供給に寄与します。
アナログ電源分離:
アナログ電源はデジタル電源とは独立して供給するか、ノイズフィルタ(LCフィルタなど)を介して供給します。
3.アナログ信号経路の最適化
配線を短く太く:
センサからADC入力ピンまでの配線は、できる限り短く太くします。配線自体がアンテナになったり、インピーダンスが高くなったりするのを防ぎます。
シールド線:
特に微弱信号を扱う場合は、シールド線を使用し外部ノイズの混入を防ぎます。シールドは片側GND接続が基本です。
フィルタ回路:
RCローパスフィルタ(抵抗とコンデンサの組み合わせ)をADC入力の直前に挿入し、高周波ノイズを除去します。
4.アナログ/デジタル配置の分離
基板設計時に、アナログ回路領域とデジタル回路領域を物理的に離して配置します。
ADCやセンサはアナログ領域に集中させ、CPUや高速クロックラインなどはデジタル領域にまとめます。
3.ソフトウェア処理によるノイズ対策(データ補正)
ハードウェアでノイズを完全に除去するのは困難です。
そのため、読み取ったデータからノイズ成分をソフトウェアで補正するテクニックも活用します。
1.平均化処理(アベレージング)
方法:
複数回(例:8回、16回)ADC変換を行い、その平均値を採用します。ノイズはランダム性が高いため、平均することで相殺され、純粋な信号成分が浮かび上がります。
効果:
精度向上。
注意点:
応答性が低下するため、変化の速い信号には不向き。

2.移動平均(Moving Average)
方法:
最新のN個のサンプリング値を常に保持し、その平均値を現在値とします。
効果:
平均化より応答性が高く、ノイズを抑制。
注意点:
ソフトウェアでバッファ管理が必要。

3.メディアンフィルタ(中央値フィルタ)
方法:
N個のサンプリング値を収集し、それを昇順または降順に並べ替え、中央の値を採用します。
効果:
スパイクノイズ(一過性の大きなノイズ)に非常に強い。
注意点:
信号変化の鋭い部分は丸められる可能性あり。
4.ハードとソフト、どちらから取り組むべき?
**基本は「ハードウェア対策を優先する」**です。
ノイズをハードウェアで発生させない・入れないことが最も効率的で、確実な対策です。
ハードウェア対策でノイズをある程度抑え込んだ上で、それでも残る微小なノイズをソフトウェアで処理して精度を高める、というアプローチが最適です。
5.まとめ
・ADCノイズ対策は、**ハードウェア設計(GND, 電源, 配線)**が基本中の基本。
・RCフィルタなどでノイズの入り口を塞ぐ。
・ソフトウェアでは平均化処理などで読み取り精度を向上。
・ハードでノイズを減らし、ソフトで残ったノイズを補正する「ハイブリッド対策」が、最も効果的なアプローチです。
ノイズとの戦いは、組み込みエンジニアの腕の見せ所。
適切な対策で、信頼性の高いアナログ計測を実現しましょう。


